Kotlinの let、with、also、run の使い分け | テック・旅・ライフジャーナル

Kotlinにはスコープ関数として let、with、also、run などがあります。これらを適切に使い分けることで、コードをより読みやすく、簡潔に記述できます。本記事では、それぞれのスコープ関数の特徴と使い方を解説します。

1. `let` – スコープ内での変数利用

let は、オブジェクトが null でない場合にスコープ内で処理を行うのに適しています。レシーバ（対象オブジェクト）を it で参照できます。

val name: String? = "Kotlin"
name?.let {
    // Name length: 6
    println("Name length: ${it.length}") 
}

特徴:

null 安全性の向上（?.let で null チェックができる）
スコープ内で it を使い、オブジェクトにアクセス
チェーンで処理を行いやすい

2. `with` – コンテキスト内でプロパティを操作

with は、特定のオブジェクトに対して複数の処理を行う際に使用します。戻り値は with ブロックの最後の式の結果になります。

val person = Person("Alice", 25)
val info = with(person) {
    "Name: $name, Age: $age"
}
// Name: Alice, Age: 25
println(info)

特徴:

this を使ってオブジェクトのプロパティにアクセス
そのオブジェクトの文脈で一連の処理を実行
戻り値が最後の式の結果になる

3. `also` – 副作用のある処理に適用

also は、オブジェクトを変更せずにログ出力やデバッグ情報の追加など、副作用のある処理を行うときに便利です。レシーバを it で参照できます。

val user = User("John").also {
    // Creating user: User(name=John)
    println("Creating user: $it") 
}

特徴:

元のオブジェクトをそのまま返す
ログやデバッグなどの副作用のある処理を適用

4. `run` – 初期化や計算結果を返す場合に

run は、オブジェクトのプロパティにアクセスしながら初期化を行ったり、一連の計算をまとめたりするのに適しています。レシーバを this で参照できます。

val person = Person("Bob", 30).run {
    "$name is $age} years old"
}
// Bob is 30 years old
println(person)

特徴:

this を使ってオブジェクトのプロパティを参照
最後の式の値を返す
便利な一時変数を使わずに初期化を行える

`let`、`with`、`also`、`run` の応用

Kotlin の let、with、also、run の応用

Kotlin には let、with、also、run などのスコープ関数が用意されており、コードの可読性を向上させたり、冗長な記述を省略したりするのに役立ちます。本記事では、それぞれの関数の応用例を紹介します。

1. `let` の応用

応用例: リストの変換

リスト内の各要素を変換し、文字列として結合する例です。let を使うことで変換処理を簡潔に記述できます。

val numbers = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
val squaredNumbers = numbers.map { it * it }.let { it.joinToString() }
// "1, 4, 9, 16, 25"
println(squaredNumbers)

応用例: チェーン処理

let を連続して適用し、文字列の変換を段階的に処理する例です。

val result = "hello".let { it.uppercase() }.let { "$it World!" }
// "HELLO World!"
println(result)

2. `with` の応用

応用例: データクラスの比較処理

with を使用して、データクラスのプロパティを簡単に参照し、比較処理を行う例です。

data class Person(val name: String, val age: Int)

val person1 = Person("Alice", 30)
val person2 = Person("Bob", 25)

val isOlder = with(person1) {
    age > person2.age
}
// "Alice is older than Bob: true"
println("Alice is older than Bob: $isOlder")

応用例: 初期化処理をまとめる

with を利用してオブジェクトの初期化処理を簡潔にまとめる例です。

val paint = with(Paint()) {
    color = Color.RED
    style = Paint.Style.FILL
    this // Paint インスタンスを返す
}

3. `also` の応用

応用例: オブジェクトのコピー処理

also を使うことで、副作用を発生させつつオブジェクトをコピーする処理を簡潔に記述できます。

val originalList = mutableListOf("A", "B", "C")
val copiedList = originalList.also { println("Copying list: $it") }.toMutableList()
copiedList.add("D")
// "Original: [A, B, C]"
println("Original: $originalList")
// "Copied: [A, B, C, D]"
println("Copied: $copiedList")

応用例: バリデーションチェック

also を利用して、オブジェクトの値をチェックしつつ処理を継続する例です。

val input = "Hello"
val validatedInput = input.also {
    require(it.isNotEmpty()) { "Input must not be empty" }
}

4. `run` の応用

応用例: 設定の適用

run を使うことで、オブジェクトの設定を適用する処理を簡潔に記述できます。

class Config {
    var debug = false
    var logLevel = "INFO"
}

val config = Config().run {
    debug = true
    logLevel = "DEBUG"
    this
}
// "Debug: true, LogLevel: DEBUG"
println("Debug: ${config.debug}, LogLevel: ${config.logLevel}")

応用例: Nullable な値の処理

run を利用して、Nullable なオブジェクトを安全に処理する例です。

val result = nullableObj?.run {
    process(this)
}

まとめ

let は null チェックや一時スコープを適用するのに適しており、it を使ってオブジェクトにアクセスできます。
with はオブジェクトのプロパティをまとめて操作するのに便利で、this を使って参照できます。
also はオブジェクトを変更せずに副作用のある処理を実行するのに適しており、it でアクセスできます。
run はオブジェクトの初期化や計算処理を行うのに適しており、this でプロパティにアクセスできます。

これらのスコープ関数を適切に使い分けることで、Kotlinのコードをより簡潔に、可読性の高いものにできます。

1. let – スコープ内での変数利用

特徴:

2. with – コンテキスト内でプロパティを操作

特徴:

3. also – 副作用のある処理に適用

特徴:

4. run – 初期化や計算結果を返す場合に

特徴:

let、with、also、run の応用

1. let の応用